Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
七
@
温泉を堪能し、部屋へ戻ると
女将を筆頭とした幾人かの中居たちが
夕食の準備に取りかかっていた。
「はぁー、美味しかった」
みのりは跡形もなく片づけられたテーブルを眺めながら
満たされた腹をさする。
「俺もう腹いっぱいだよ」
向かいに座っていた涼介も、
背中を反らすように腰掛けの背もたれに抑えつけていた。
満足気に瞳を閉じている青年の姿にみのりは目を和ませる。
(あんな顔もするのね)
再会してから終始、眉を釣り上げて文句を言うか、
困惑気味に眉尻を下げた顔ばかりを見てきた。
それが今はすべて消え、穏やかな顔つきになっている。
(こういう顔を最初から見せてくれたら
私だってけんか腰にならなかったのに……)
初めて会ったあのときもそうだった。
楽しそうに川原で遊んでいた涼介に興味を持ち
近づいた途端に困り顔をされたことを思い出し、
みのりは顔をしかめる。
(別に私はあいつがどんな顔をしていようが関係ないけどね)
ふん、と鼻を鳴らすようにそっぽを向くと、
爽やかな笑みを浮かべて近づいてくる碧と目が合った。
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