Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
二
A
「私の場所。いつもお嬢さまの隣」
(さすがの碧でも紅には形なしね)
みのりは、悲しげに紅の名を呼ぶ碧をミラー越しに見て
くすりと笑う。すると、涼介が身を乗り出してきた。
「狭くしちゃってごめんね、紅さん」
前屈みで紅へ目線を向ける涼介の顔が近づいたことに驚き、
勢いよく背もたれに背中を押しつける。
(ちょ、ちょっと近いわよ)
文句を言いたくても息が彼の顔にかかってしまいそうだ。
みのりが何も言えずに口の開閉を繰り返していると、
紅へ向けていた碧の声が涼介へ移動した。
「ダメですよ、涼介君。君は梅畑の人間なのですから。
さ、紅、わがまま言わないで僕の隣へ来なさい」
碧の言い分も一理ある。
たとえ紅を隣に座らせたいという欲望から出てきた言葉だろうと、
末端に席を持つとはいえ梅八家の子息を粗略に扱っては
あの長男に何を言われるかわかったものではない。
みのりは碧の提案を無視する紅を宥めにかかった。
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