Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
二
I
「ここのアイスクリーム美味しいのよね」
みのりはあのとき食べた冷たくて甘い滑らかなミルク味のアイスと、
その中に混ざっていたシャリシャリとした氷の食感を思い出す。
「アイス」
紅も同じことを考えているらしい。
うっとりとした表情でどこか遠くを見ていた。
「あげないよ」
一刀両断するような涼介の物言いにみのりは我に返る。
「べ、別にいらないわよ」
「俺をこの茶番から解放してくれるならあげてもいいけど。
おいしいアイスクリーム、食べたいんだろう?」
みのりは食べ物夢中になってしまった自分を恥じながら、
クーポン券を涼介へと突っ返す。
何が悲しくて
むかつく相手に食べ物を恵んで貰わなければならないのだ。
それにクーポン券を譲り受けてしまえば、
この男に借りを作ってしまうことになる。
確約はしなかったとはいえ涼介の同行を認めてしまった現状で
それを反故にするということは、
梅畑の長男にも借りを作ってしまうことになるだろう。
本家から逃げている自分がこんなところで彼らに借りを作るのは
危険すぎる。
何より涼介に借りを作るのだけは絶対に嫌だった。
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