Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IA




 明後日の方角を向いてしまうみのりを前に、涼介は頬をかく。

「真面目な話、俺は甘いのそんなに好きじゃないから。アイスはいらないよ」

 吐息とともに告げると、みのりの肩が微かに動いた。

「べ、別に、わ、私はあんたがどうしてもって言うなら

もらってあげないでもないけど……」

 そっぽを向いたまま、だが一瞬だけこちらへ視線を向けてくる。

普段涼しげな瞳がほんの僅かに見開かれるのが見え、

涼介は動きをとめた。

(なんだ?)

 とくんと鳴った胸に戸惑いながらなんとか頷く。

  「……うん。じゃあ受けとっておいてよ」

 クーポンをみのりへ手渡そうとすると少女が振り返り、

今にも落ちそうなほど目を輝かせてきた。

(う……)

 嬉しげに上気させた表情をまともに見て思考が停止する。

 きらりと光る瞳がなんとも魅惑的だ。

少し開かれた桃色の唇に目が離せなくなる。

(待て待て待て待て!)

 彼女は腐っても梅宮みのりなのだから。

(こんな毒舌お嬢様をかわいいなんて勘違いも甚だしいぞ!)

 第一、今はそんな場合ではないはずだ。

自分を叱咤しているうちに、我に返ったらしいみのりが

ぱっと顔をそむけてきた。

「い、いいわよ」

 少しだけ声が震えている。

そんなにもクーポンが欲しかったのか。

(まいったなあ)

 どうにもかわいく思えてしかたがない。

「どうぞ」

 涼介はやたらくすぐったくなってしまった気持ちをもてあましつつ、

今一度手を差しだした。










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