Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
C
涼介はドアの開いたタクシーの後部座席へみのりを促し、
助手席へ乗りこみながら運転手へ声をかける。
「中央区のトニーズまでお願いします」
行先を告げると運転手が了承してきた。
「はい。かしこまりました」
軽く頷き後方を確認している運転手をよそに、
タクシーの内装をみのりが見まわす。
「へー、これがタクシーかー。なんか変わってるわね」
よほど物珍しいのかきょろきょろとせわしないことこの上ない。
どう考えても怪しすぎるみのりの行動に、
涼介はフォローの必要性を感じた。
軽く眉を寄せている運転手へ話を振ってみる。
「すみませんね。この子地方から来てて慣れてれてないんですよ」
こちらの言葉に運転手がそうですか、と応じてくる。
やたら首を上下させているところを見ると、
やはり怪しまれていたようだ。
ほっと胸をなでおろしていると、
みのりが後部座席と前部座席の間にある透明なプレートを指さした。
「ねえ、この透明な間仕切りみたいなものはなんなの?」
みのりの質問に運転手が答える。
「それは防犯ですよ、お客さん。
ちなみに前にはドライブレコーダーもありますよ」
ご機嫌なようすで説明してくる運転手にみのりが首をかしげる。
「防犯? あー、突然悪い人が来たときのためね。
でもそれだと雇い主を守れないんじゃ?」
「雇い主? 雇い主なら事務所にいますが?」
みのりの言葉に運転手が眉間の皺を深くして、涼介は慌てた。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|