Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




D




「みのりさん! う、運転手さん、とにかく出発してください。

ちょっと急いでるんで」

 これ以上話込んでいてはみのりの素性がばれてしまう。

よくわからないが、追手と呼ばれる人間たちから逃げている以上、

やっかいなことになるのは避けるべきだ。

涼介は前方を指さして運転手を促した。

「何よ、大きな声だして」

 何もわかっていないらしいみのりが目を瞬くのがミラー越しに確認できる。

涼介は内心でいらつきながら窓の外を指さした。

「いや、ほら、緑がきれいだよねえ! 君そういうの好きだっただろ?」

 動きだした車の窓辺からはきれいに整えられた街路樹が見える。

遠くにはみのりの実家である梅願山もそびえたっていた。

「え? えぇ、好きだけど……」

 戸惑ったような声をだしたのちみのりは窓へ視線を向けてきた。

「わぁー、空の青と梅願に連なる山々のコントラストが綺麗ね」

 すがすがしいほどの感嘆にこっそり溜め息をついていると、

運転手が眉を顰めたままみのりへ尋ねた。

「お客さん、外から来た人にしてはずいぶんくわしいですなあ」

 どうやらまたしても疑いを持たれてしまったらしい。

なんと答えたものかと思っていると、

後ろから当たり前でしょ、と言わんばかりの声が聞こえてきた。

「詳しいのは当然よ。だって私はあの山から来たんですから」

 運転手の目が小さく見開かれ、涼介は焦る。

慌てて窓の外を指さした。

「わあ! なんか、でっかいムカデが空飛んでる!」

 混乱した頭で我ながら無理のありすぎる嘘をつく。

「えー!! どこどこ?」

 背中に嫌な汗を流しながら運転手のようすを覗き見ようとするその背後で、

あり得ないほど場違いなみのりの声が飛んできた。










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