Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




G




(ううん。泣き言なんて言っちゃダメよね)

「そ、そうかな?」

(え?)


 こちらの考えを否定する涼介の声に驚き、みのりは顔を上げる。

自分の心の声が聞こえたのかと、

速まった鼓動を白いどっと柄のついたグレイのパーカーの上から押さえた。


「いやあ、昨日からずっと人捜しで疲れてたから」

(なんだ、まだそっちの話が続いていたのね)


 さっきまで嫌みしか言ってこなかった男が

急に優しくなったのかとドキドキしたが、早とちりだったらしい。

みのりはホッと息を吐き出し、熱くなった顔を手で仰いだ。


「そうよね。こいつがそんな優しい言葉なんて……

え、やだ、ちょっと人捜しなんてしてたのに一緒に来てよかったの?」


 自分の早合点に苦笑し気持ちが落ち着いた頃、涼介の発言を理解し慌てる。

今からでも遅くはない、自分には構わず人捜しを優先させるべきだ。

そう口にする前に、またも運転手が会話に入ってきた。


「人捜し、それは大変ですね。迷子か何かですか?」

「ええ、なんでも何か気に入らないことがあって家を飛び出して

どこ行ったかわからない女の子なんですけどね。

親の苦労も知らないで。困ったもんですよ」


 運転手の心配そうな顔をミラー越しに見ながら

聞こえてくる涼介の言葉に目を丸くする。


「ちょ、ちょっと!

それって私のことを言ってるんじゃないでしょうね?」

「え? 君も郷(くに)から家出してきたの?

それはよくないなあ。いっそのこと家まで送ろうか?」


 みのりはわざとらしい涼介の態度に内心で舌打ちした。










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