Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
G
(ううん。泣き言なんて言っちゃダメよね)
「そ、そうかな?」
(え?)
こちらの考えを否定する涼介の声に驚き、みのりは顔を上げる。
自分の心の声が聞こえたのかと、
速まった鼓動を白いどっと柄のついたグレイのパーカーの上から押さえた。
「いやあ、昨日からずっと人捜しで疲れてたから」
(なんだ、まだそっちの話が続いていたのね)
さっきまで嫌みしか言ってこなかった男が
急に優しくなったのかとドキドキしたが、早とちりだったらしい。
みのりはホッと息を吐き出し、熱くなった顔を手で仰いだ。
「そうよね。こいつがそんな優しい言葉なんて……
え、やだ、ちょっと人捜しなんてしてたのに一緒に来てよかったの?」
自分の早合点に苦笑し気持ちが落ち着いた頃、涼介の発言を理解し慌てる。
今からでも遅くはない、自分には構わず人捜しを優先させるべきだ。
そう口にする前に、またも運転手が会話に入ってきた。
「人捜し、それは大変ですね。迷子か何かですか?」
「ええ、なんでも何か気に入らないことがあって家を飛び出して
どこ行ったかわからない女の子なんですけどね。
親の苦労も知らないで。困ったもんですよ」
運転手の心配そうな顔をミラー越しに見ながら
聞こえてくる涼介の言葉に目を丸くする。
「ちょ、ちょっと!
それって私のことを言ってるんじゃないでしょうね?」
「え? 君も郷(くに)から家出してきたの?
それはよくないなあ。いっそのこと家まで送ろうか?」
みのりはわざとらしい涼介の態度に内心で舌打ちした。
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