Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
I
「行くのなら、あんただけで行ったらいいじゃない。
運転手さん、この人があの山まで行きたいそうなので、
私をトニーズで降ろしたあと向かってください」
「君、そういう自分を追い込むようなことを言うのは
やめておいたほうがいいと思うよ」
肩を激しく上下させながら荒くなった息を整えていると、
涼介が肩を竦めため息をついてきた。
「追い込む? なんのことよ」
涼介の伝えたいことが皆目見当もつかず、
みのりは怒りも忘れ彼を見つめた。
しかし青年はこちらの存在など無視し、運転手に話しかける。
その声はどこか刺々しく感じた。
「運転手さん、この田舎娘は無視して当初の予定通りトニーズへ
向かってください」
「ええっと、結局どっちなんです?」
「トニーズへ」
「はい」
(な、何よ、勝手に怒ったかと思ったら勝手に話を進めて……。
いいわよ、そっちがその気ならこっちだって勝手にするわよ)
みのりは涼介から視線を反らすように向けた窓の外を見ながら、
潤んだ瞳を乾かそうとまばたきを繰り返した。
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