Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




I




「行くのなら、あんただけで行ったらいいじゃない。

運転手さん、この人があの山まで行きたいそうなので、

私をトニーズで降ろしたあと向かってください」

「君、そういう自分を追い込むようなことを言うのは

やめておいたほうがいいと思うよ」


 肩を激しく上下させながら荒くなった息を整えていると、

涼介が肩を竦めため息をついてきた。

「追い込む? なんのことよ」


 涼介の伝えたいことが皆目見当もつかず、

みのりは怒りも忘れ彼を見つめた。

しかし青年はこちらの存在など無視し、運転手に話しかける。

その声はどこか刺々しく感じた。


「運転手さん、この田舎娘は無視して当初の予定通りトニーズへ

向かってください」

「ええっと、結局どっちなんです?」

「トニーズへ」

「はい」

(な、何よ、勝手に怒ったかと思ったら勝手に話を進めて……。

いいわよ、そっちがその気ならこっちだって勝手にするわよ)


 みのりは涼介から視線を反らすように向けた窓の外を見ながら、

潤んだ瞳を乾かそうとまばたきを繰り返した。










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