Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
I@
「いいから君はそこで外でも眺めてな。
口を開くとロクなことがない」
涼介は息を吐きつつ後方へ告げる。
少しもこちらの意図を察しないのはやはりお嬢様育ち故か。
頭を掻きむしりたい衝動を抑え首を回していると、
震えた声が聞こえてきた。
「いったい、さっきからなんなのよ。
そっちが変なこと言うからいけないんでしょう。
だいたい礼儀、礼儀って言うくせに
失礼な扱いをしてるのはそっちのほうじゃない」
外を見ながらブツブツと愚痴るみのりの言葉に答えず、
涼介は頬杖をつく。
これ以上何を言っても、今の彼女には無駄でしかない。
そんな重い空気を察したのか隣の席からおずおずとした声が聞こえてきた。
「お客さんたち、痴話げんかはよくありませんよ?」
見当違いの発言に涼介は眉根を寄せる。
「それは恐ろしい誤解です、運転手さん」
真面目に答えるが、運転手はうんうんと頷くだけだった。
「初々しいですなあ」
「は、はあ……」
しみじみと告げられた言葉へ、涼介は曖昧に答える。
年上の人間は思い込みが激しいとは聞いていたが、
これほどとは思わなかった。
内心で飽きれていると、後方から気だるげな声が聞こえてきた。
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