Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IA




「ねえそんなことより、まだつかないの?」

 うんざりしたような声を発するみのりへ、

運転手が申し訳なさげに答えた。

「はあ、もうすぐ着きますが、どうも妙な車が後ろに……」

 ためらいがちに答えた言葉にみのりが目を剥く。

「え!」

 すばやく後ろを確認したみのりが、顎に手をあてる。

「まずいわね」

 みのりの言葉に涼介が首をかしげた。

「訓練にしてはずいぶん物騒なんじゃないかい?」

 どう考えてもこれは訓練には見えないが、

あえて尋ねてみる。

「何言ってるの当たり前じゃない!

訓練じゃない……じゃなくて、

本番さながらにやらないと意味がないでしょう?」

 案の定慌てきりしどろもどろになるみのりへ、

へえ、と振り返らず応じた。

「そーなんだー」

 棒読みよろしく告げるとみのりが居心地悪そうに姿勢を正す。

「そ、そうよ。だから本気で逃げ切らないと意味がないのよ」

 腹をくくったのだろうか。

腕を組みふんぞり返るみのりを後ろ手に、涼介は吐息した。

「ふーん。じゃあしかたない。運転手さん」

 なるべく落ち着いた声で名を呼ぶと、

運転手も前方を見たまま答えてくる。

「なんでしょう?」

「線路沿いからさらに裏道へ抜けて、

橋のところあたりでおろしてくれませんか?」

「は、はあ。かしこまりました」

 こちらの提案が予想外のことだったのか。

運転手は一瞬固まると、それから小さく頷いた。










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