Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
IA
「ねえそんなことより、まだつかないの?」
うんざりしたような声を発するみのりへ、
運転手が申し訳なさげに答えた。
「はあ、もうすぐ着きますが、どうも妙な車が後ろに……」
ためらいがちに答えた言葉にみのりが目を剥く。
「え!」
すばやく後ろを確認したみのりが、顎に手をあてる。
「まずいわね」
みのりの言葉に涼介が首をかしげた。
「訓練にしてはずいぶん物騒なんじゃないかい?」
どう考えてもこれは訓練には見えないが、
あえて尋ねてみる。
「何言ってるの当たり前じゃない!
訓練じゃない……じゃなくて、
本番さながらにやらないと意味がないでしょう?」
案の定慌てきりしどろもどろになるみのりへ、
へえ、と振り返らず応じた。
「そーなんだー」
棒読みよろしく告げるとみのりが居心地悪そうに姿勢を正す。
「そ、そうよ。だから本気で逃げ切らないと意味がないのよ」
腹をくくったのだろうか。
腕を組みふんぞり返るみのりを後ろ手に、涼介は吐息した。
「ふーん。じゃあしかたない。運転手さん」
なるべく落ち着いた声で名を呼ぶと、
運転手も前方を見たまま答えてくる。
「なんでしょう?」
「線路沿いからさらに裏道へ抜けて、
橋のところあたりでおろしてくれませんか?」
「は、はあ。かしこまりました」
こちらの提案が予想外のことだったのか。
運転手は一瞬固まると、それから小さく頷いた。
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