Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IB




「ちょっと何するつもり?」


 みのりはタクシーを止めようとする涼介に慌てる。

だが彼はこちらの戸惑いを気にするふうでもなく

平然と返してきた。


「何って、トニーズへ向かうんだけど?」

「でも道を変えて……ううん、

そんなことより追手から逃げないと」


 せっかく今まで順調にきているのだ。

ここで捕まってはたまらない。

彼らに連れ戻されてしまったら最後。

すぐにでも涼介との見合いが執り行われてしまうだろう。


(ううん。お見合いなんて生やさしいものじゃなくて

結婚させられちゃうかも……)


 みのりは自身の考えに血の気が引いた。

 家族のことよりも当主としての仕事を最優先に考えている

母親ならやりかねない。

しかも家出した責任をすべて囮になってくれた碧たちへ被せ、

彼らと引き離そうとするだろう。

自分のために危険を顧みず協力してくれた側近たちのためにも

絶対に捕まるわけにはいかない。

 涼介はそこのところをきちんと理解していないようだ。


(訓練だって言ってしまった手前、

あんまり強く言えないのが悔しいところよね)


 それでももう少し真剣に取り組んでくれてもいいはずなのに。

みのりは寝癖なのか一部だけ跳ねている涼介の後頭部を

恨みがましく見つめた。










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