Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
ID
「お気をつけて」
運転手の言葉に涼介は愛想笑いを浮かべる。
「ありがとうございます。ここまでくれば目と鼻の先ですから」
「ありがとうございます。運転手さん」
みのりが告げると頷いた運転手は車のドアを閉め、
早々に走り去っていった。
「一般人用の専用車って日払い制なのかしら?」
またしてもとんちんかんな独り言を呟くみのりを横に、
涼介は肩をすくめる。
「さあ? 会社によるんじゃないかな。
それより、いくよ。ほら、すぐそこだからさ」
踵を返しトニーズと書かれた看板へ歩きだすと、
後ろ手にみのりの声がきこえてくる。
「そうか。そうよね。
でも月額のほうが面倒がないような気がするわ……
って、ちょっと待ちなさいよ」
ぶつぶつと思案していたらしいみのりが、慌てて追いかけてきた。
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