Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




G




 幼い頃から次期当主として育てられたため、

一般的な生活とはかけ離れた場所で育ってきた自覚はあった。

幼稚園へ入ったばかりの頃は、

そのせいで他の子供たちと話が合わずギクシャクしたものだ。

成長するにつれて自分を偽ることを覚えたからこの手の失敗は

しなくなったと思っていたのに。

みのりは未だに肩を震わしている涼介にいたたまれなくなり、

潤み出した瞳を瞬きで散らしながらそっぽを向いた。


「そ、そんなに笑わなくたっていいじゃない!」

「くくくくっ……」


 まだ笑い続けている涼介にだんだんと腹が立ってくる。


「って、いい加減笑うのやめなさいよ」

「悪かったよ。ただ君があんまりにも純粋なもんだから」


 まさか涼介の口から誉め言葉が出てくるとは思わず、

みのりは怒っていたことも忘れ彼を凝視した。


「純粋? なんの話よ」

「お待たせいたしました。コーヒーのお客様」


 しかし涼介の真意は、飲み物を持ってきた店員のせいで

聞くことはできなかった。


「あ、俺です」

「こちらがほうじ茶になります。デザートはもうしばらくお待ちください」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 みのりはコーヒー、ほうじ茶の順に置いていく店員へ作り慣れた笑みを向ける。

店員はそのまま流れるようなお辞儀をして去って行った。










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