Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
四
G
幼い頃から次期当主として育てられたため、
一般的な生活とはかけ離れた場所で育ってきた自覚はあった。
幼稚園へ入ったばかりの頃は、
そのせいで他の子供たちと話が合わずギクシャクしたものだ。
成長するにつれて自分を偽ることを覚えたからこの手の失敗は
しなくなったと思っていたのに。
みのりは未だに肩を震わしている涼介にいたたまれなくなり、
潤み出した瞳を瞬きで散らしながらそっぽを向いた。
「そ、そんなに笑わなくたっていいじゃない!」
「くくくくっ……」
まだ笑い続けている涼介にだんだんと腹が立ってくる。
「って、いい加減笑うのやめなさいよ」
「悪かったよ。ただ君があんまりにも純粋なもんだから」
まさか涼介の口から誉め言葉が出てくるとは思わず、
みのりは怒っていたことも忘れ彼を凝視した。
「純粋? なんの話よ」
「お待たせいたしました。コーヒーのお客様」
しかし涼介の真意は、飲み物を持ってきた店員のせいで
聞くことはできなかった。
「あ、俺です」
「こちらがほうじ茶になります。デザートはもうしばらくお待ちください」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
みのりはコーヒー、ほうじ茶の順に置いていく店員へ作り慣れた笑みを向ける。
店員はそのまま流れるようなお辞儀をして去って行った。
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