Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
四
I
「そうなの? なんだ良かった」
みのりがホッとしたような表情でボスンと椅子に座る。
「素直なのはかわいいんだけど、いいんだか悪いんだか……」
「え? 何か言った?」
気づかれぬよう口の中で呟くと、みのりが形のよい眉を軽く顰めた。
「いやいや、何も」
首を横に振ってその場を濁そうと試みる。
だが、みのりにこの手の誤魔化しはきかなかったようだった。
「にやにやして変な人ね」
頬を膨らませるみのりの言葉に、涼介は眦(まなじり)を上げる。
「に! にやにやなんかしてないだろ」
立ちあがりそうになるのをなんとかこらえてみのりを睨むと、
みのりが顔を近づけてきた。
「してたわよ。目じりをこーんな感じに下げて」
みのりが人差し指で両目尻を下げてみせてくる。
涼介はみのりの顔をしばし眺め、盛大な溜め息をついた。
「つくづく失礼なこと言う子だなあ、君は」
せっかくの美人が台無しじゃないか、と内心で付け加えていると、
みのりが腕を組む。
「そっちが先に笑うからいけないんでしょう?
だいたい最初に会ったときだってそうよ」
涼介はみのりの言葉に片眉をあげた。
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