Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
五
I@
「碧さんには見えないのに
紅さんには見えるってのは不思議だな」
涼介が雪姫を見ようと体を屈める。
みのりは近づいてきた彼の体温に、ドキリと目を見張った。
(さっきから無自覚に近づきすぎなのよ)
眼前に涼介の黒くサラサラとした髪の毛が揺れる。
自分の息が彼の髪の毛を揺らしてしまうかもしれない。
そう考えるだけで上手く呼吸ができなくなった。
(無闇に女子に顔を近づけるんじゃないわよ)
一度きちんと説教したほうがいいのかもしれない。
みのりは口を開こうと息を吸い込む。
しかし言葉を発する前に碧の声に遮られてしまった。
「いえ、涼介君。僕にも見えてますよ」
「そうでしたか。すみません碧さん」
涼介が何事もなかったかのように姿勢を直して碧へ向き合う。
(なんなのよ! 1人で動揺してた私がバカみたいじゃない)
あっという間に離れていく涼介の顔に安堵しつつも、
自分だけがわたわたしていたことが理不尽に思えて
みのりは顔をしかめる。
だが、そんなこちらを心底面白そうに見つめている視線に気づき、
みのりは顔をひきつらせた。
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