Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




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「お嬢様、到着しました。ここが、温泉宿『わさび谷』ですよ」


 碧がバーンと腕を広げた先には、

趣のある木造建造物が建っていた。

青々とした葉が生い茂る森の中に

ポッカリと穴が開いたような場所にどっしりと構えている

3階建ての建物は、古き良き時代の分校といった雰囲気だった。


 時折、鳥の声が聞こえてくる。

脇を流れる川のせせらぎと風の音(ね)に合わさる音色が

荒んだ心を慰めてくれるようで。

みのりは、ふうとおもむろに息を吐き出した。


「こんなところに宿屋なんてあったんだなあ」

「そうねー」


 涼介が目をつむり、清涼な空気を深呼吸する。

みのりも彼に釣られるように息を吸い込もうと両手を広げ、

我に返った。


「って、ここ梅願じゃない!! 見つかったらどうするのよ!」


 川を挟んだ向こう側に聳える山々は梅宮が所有するものだ。

自分たちはあの場所から逃げているというのになぜ近づくような

真似をするのかと、みのりは碧を睨みつけた。

しかし彼はいつものように飄々と返してくる。


「大丈夫ですよ、お嬢様。灯台下暗しって言うじゃありませんか」

「いいと思いますよ。俺。

温泉ってほとんど行ったことなかったし」

「観光しに来たんじゃないのよ」


 毒気を抜かれるような涼介の態度に

みのりはがくりと肩を落とした。










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