Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
一
H
「なるほど。それでしたら申し訳ないがこれは受け取れないですね」
「へ? なんでですか?」
碧が涼介の差し出す手を断ると、
涼介は間の抜けた声を発し目を丸くした。
「涼介君にも一緒に来てもらうからですよ」
当たり前のように告げられる側近の言葉に、
今度はこちらが目を剥く。
「なんでよ! いいじゃない。
くれるっていうだからもらっておきなさいよ」
「お嬢様、味方は多いほうが良いのでしょう?」
「うぐっ。それとこれとは……」
言った覚えのある言葉を出され、みのりは碧から目線を逸らす。
それでも認めきれず口をすぼめ小さな声で抗っていると、
涼介がキッパリとした声を被せてきた。
「俺は一緒にはいけません。……約束もあるし、
第一このわが……じゃなくてお嬢様が納得しないと思いますよ」
(……誰がわがままよ)
みのりは後半に聞こえてきたセリフにピクリと頬をひきつらせる。
だがここで口を出してしまえば話が止まってしまう。
(今だけよ。今だけ我慢すればいいんだから)
癪に触るが涼介と一緒に行動しなくて済むのなら、
とみのりは自身に言い聞かせながら、
開きそうになる口を固く結んだ。
(まったくいちいちムカつく男ね! こんな男は無視よ、無視!
って、なんで私も相手にしちゃうのかしら?)
無視してしまえばいいだけの話ではないか。
普段の自分ならば次期当主としての仮面をつけ
他者の言葉など聞き流しているはずだ。
それなのに涼介から発せられる言葉にはどうしても反応してしまう。
みのりは制御できない自身の言動に内心で首を傾げた。
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