Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
H
「ミステリアスって、一言で表し過ぎでしょう。
もう少し詳しく説明しなさいよ」
「私はただ人より少し勘がよいだけの人間でございますよ。
みのり様」
「は、はぁ……」
女将がにこりと笑みを浮かべる。
いつの間にか梅の間から出てきていたらしい。
まさか本人から説明されるとは思ってもみなかった。
みのりは気まずさに頬をひきつらせる。
そこへ元凶である碧が何食わぬ顔で割り込んできた。
「お茶は結構ですよ、女将。
夕食は桜の間へすべて運んでください」
「承知いたしました。それではごゆるりとお過ごしくださいませ」
さすがは接客業のプロとでも言うべきか。
初対面にも関わらず非礼をした客に嫌な顔を見せることなく
心の底から労るような笑みを向けてくる。
(碧といい、女将といいこれが大人な対応ってことなのかしら?)
それにしたって碧はもう少し気を使うべきだ。
主である自分が先走り気まずい思いをしているというのに。
フォローの1つでもあっていいのではないのだろうか。
「ありがとうございます」
女将がしずしずと来た道を歩き出すと同時に
碧が普段通りの笑みで礼をする。
そんな側近を姿にみのりは内心で苦笑した。
(ううん、違うわね。
これくらい自分で対処しなさいってことなんだわきっと)
いつもフォローできるわけではないのだから、
自分の撒いた種は自分で収穫できなくては困ります。
言外にそう言われているようでみのりは小さくため息をついた。
(相変わらず、手厳しいんだから。
……でも裏を返せばフォローしなくても私1人で対処できるって
思ってくれてってことよね)
みのりは声をかけるには少し距離があいてしまった
女将の背中を眺めながら、
あとできちんと謝罪をしなければと思った。
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