Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




H




「ミステリアスって、一言で表し過ぎでしょう。

もう少し詳しく説明しなさいよ」

「私はただ人より少し勘がよいだけの人間でございますよ。

みのり様」

「は、はぁ……」


 女将がにこりと笑みを浮かべる。

いつの間にか梅の間から出てきていたらしい。

まさか本人から説明されるとは思ってもみなかった。

みのりは気まずさに頬をひきつらせる。

そこへ元凶である碧が何食わぬ顔で割り込んできた。


「お茶は結構ですよ、女将。

夕食は桜の間へすべて運んでください」

「承知いたしました。それではごゆるりとお過ごしくださいませ」


 さすがは接客業のプロとでも言うべきか。

初対面にも関わらず非礼をした客に嫌な顔を見せることなく

心の底から労るような笑みを向けてくる。


(碧といい、女将といいこれが大人な対応ってことなのかしら?)


 それにしたって碧はもう少し気を使うべきだ。

主である自分が先走り気まずい思いをしているというのに。

フォローの1つでもあっていいのではないのだろうか。


「ありがとうございます」


 女将がしずしずと来た道を歩き出すと同時に

碧が普段通りの笑みで礼をする。

そんな側近を姿にみのりは内心で苦笑した。


(ううん、違うわね。

これくらい自分で対処しなさいってことなんだわきっと)


 いつもフォローできるわけではないのだから、

自分の撒いた種は自分で収穫できなくては困ります。

言外にそう言われているようでみのりは小さくため息をついた。


(相変わらず、手厳しいんだから。

……でも裏を返せばフォローしなくても私1人で対処できるって

思ってくれてってことよね)


 みのりは声をかけるには少し距離があいてしまった

女将の背中を眺めながら、

あとできちんと謝罪をしなければと思った。










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