Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
I
「さて、せっかくですから温泉に入ってきてはいかがですか?」
女将の姿が見えなくなると同時に碧が提案してきた。
ニコニコと微笑みながら全員へ目を向けてくる側近を
胡散臭く眺めていると涼介が小さく手を挙げる。
「あ、俺ちょっと兄に連絡しないと」
「え、ちょっと話し合いは?」
みのりはこの場を離れようとする涼介を阻止するべく
止めに入った。
こちらの居場所を早々にあちら側に知られても困るからだ。
涼介の兄、梅畑雅秋が自分たちを援護すると言っていたが、
それを鵜呑みにするほど彼らを信用しているわけではない。
相手は末端とはいえ梅八家の当主で市長を担っている男だ。
こちらを油断させておいてそのまま何食わぬ顔で
本家へ連絡する可能性のほうが大きい。
(それに碧とすごく仲悪かったし……)
あの男は碧へ一矢報いるためなら
手段を選ばないような気がする。
みのりは涼介の顔を見つめながら、
彼の顔を少しだけ鋭くさせた男を思い出し、
眉を顰(ひそ)めた。そんなこちらに涼介が首を傾げてくる。
「話し合いって?」
「決まってるじゃない。
このかき氷機の部品と雪姫のことよ」
みのりはカバンの中に入れておいた部品を取り出し、
涼介へ見せつけるようその部品を突きつけた。
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