Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




I




「さて、せっかくですから温泉に入ってきてはいかがですか?」


 女将の姿が見えなくなると同時に碧が提案してきた。

ニコニコと微笑みながら全員へ目を向けてくる側近を

胡散臭く眺めていると涼介が小さく手を挙げる。


「あ、俺ちょっと兄に連絡しないと」

「え、ちょっと話し合いは?」


 みのりはこの場を離れようとする涼介を阻止するべく

止めに入った。

 こちらの居場所を早々にあちら側に知られても困るからだ。

涼介の兄、梅畑雅秋が自分たちを援護すると言っていたが、

それを鵜呑みにするほど彼らを信用しているわけではない。

相手は末端とはいえ梅八家の当主で市長を担っている男だ。

こちらを油断させておいてそのまま何食わぬ顔で

本家へ連絡する可能性のほうが大きい。


(それに碧とすごく仲悪かったし……)


 あの男は碧へ一矢報いるためなら

手段を選ばないような気がする。

みのりは涼介の顔を見つめながら、

彼の顔を少しだけ鋭くさせた男を思い出し、

眉を顰(ひそ)めた。そんなこちらに涼介が首を傾げてくる。


「話し合いって?」

「決まってるじゃない。

このかき氷機の部品と雪姫のことよ」


 みのりはカバンの中に入れておいた部品を取り出し、

涼介へ見せつけるようその部品を突きつけた。










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