ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その１０５

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

四

ⅹⅷ

「な、泣かないでください。あの、これ」

　麻里が、感極まって泣き出した邦夫へハンカチを差し出す。

女性らしい柔らかな色合いのそれを邦夫は素直に受け取ると、

何のためらいもなく鼻をかみ始めた。

「ふぅ。お嬢さん、ありがとうだべ」

「いいえ。大丈夫ですか？」

「ああ。問題ないべ」

（良かった。泣きやんだみたいだ……）

　太一は、孔雀のあとを追いかけながら

邦夫たちの会話を聞くともなしに聞く。

しかし孔雀の変化に、彼らの雑談へ割って入った。

「ねぇ、孔雀さん、

池の周りをグルグルしたら動かなくなったけど、いいの？」

　寺内の中央にあたる場所に池がある。

すり鉢状の底部分にあたるためか、全体を見渡すことができた。

今まで器用に池の縁を歩いていた孔雀の足が止まり、

池を見下ろした状態で動かなくなってしまっている。

太一にはそれが、池の中にいる魚を狙っているようにも見えた。

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