ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その１２３

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

五

ⅲ

　気を引き締め直し大人たち会話に耳をかたむけると、

邦夫が麻里の感想へ返答しているところだった。

「昔は蔵が建っていたらしいべ」

「なんで、蔵じゃなくなっちゃったの？」

　太一が素朴な疑問を口にすると、邦夫は眉をさげ小さくため息をつく。

「何年か前に火事があったんだべ。そんとき蔵の一部も燃えて、

修繕するのに蔵じゃ目立つからって今の形になったんだべ」

「へぇー、そうだったんだぁ」

　やはり蔵だとここに宝がありますと

言っているようなものなのかもしれない。

きっと宝物庫を狙った誰かが、火をつけたのだろう。

（お姉さんの言うとおりだったんだー）

　さすがは学校の先生だ。太一は尊敬の眼差しを麻里へ送る。

しかし彼女はこちらの視線に気づくことなく、別の観点を口にした。

「漏電とかですか？」

「いんや、参拝者のたばこの投げ捨てが原因だったべ」

（なんだ、泥棒が火をつけたわけじゃないんだ）

　てっきり宝物庫を狙ったモノの仕業かと思ったのだが、

どうやら違ったらしい。

太一はどこか肩透かしを食らったような気分になり、口を尖らせた。

一つ前を読む　　　 GPの部屋に戻る　　　次を読む