ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その１２５

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

五

ⅴ

「んだー。里夫、お前さんの手を見せるべ」

　邦夫がリオを呼び、その手を見せてくれる。

「あっ！　本当だ」

「そっくりね」

　太一が目を丸くし、麻里も同意した。

手の形といい肉球の付き具合といい、

入り口の横にある切り株と本当によく似ている。

「この切株ってムササビの肉球だったんだぁー」

　太一がリオの手に触れながらふふふ、と笑う。

リオも嫌がる様子はなく、辺りが和やかな空気に包まれた。

（かわいい光景よね）

　麻里は２人を見ながら目を細める。

写真でも撮ろうかしら、などと考えていたが、

邦夫の言葉で現実に引き戻った。

「その４本の指先に、

さっき先生が解いてくれた番号を入れていくべ」

　そうだ。今はこうしている暇はない。

またいつ上司からの叱責が飛んでくるかわからないのだから。

叱責ならまだいいが、下手をすれば首になってしまう可能性だってある。

「ええっと、ムササビ、だから、６３３……あと、なんでしたっけ？」

　麻里はほんわかしていた心を鬼にして尋ねる。

頭ではわかっているが、どうにも気持ちの切り替えがつかず、

半分ボケた調子になってしまった。

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