ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その１３１

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

五

ⅹⅰ

「キッキキキキ、キーキ。キキッキキ、キキキ」

「何か言いたいことがあるってのはわかるんだけどなー」

　里夫が一生懸命なだけにもどかさだけが募る。

太一は何かわかるかもしれないと、

里夫の鳴き声と身振りを真似てみることにした。

だが、当然の結果というべきか『キーキー』言っているだけで

何も感じ取ることはできない。

（あーなんでぼくはムササビの言葉がわからないんだろう）

　眉をひそめ、心の中でぼやいていると

麻里のため息混じりの声が聞こえてくる。

「困っちゃったわねえ……」

　里夫も伝わらないと悟ったのだろう。鳴くのをやめた。

一瞬にしてあたりが静かになる。

そこへ何者かのずるような足音が近づいてくるのがわかった。

一斉に音のするほうへ視線を向けると、

息も絶え絶えな邦夫が鍋を持って戻ってきたところだった。

「ま、待たせたべ……」

「キーキ！」

　邦夫の帰還を里夫がこれ以上ないほどに喜んでいるようだ。

リュックの上にいたはずの彼は、

今までで一番の速度で邦夫の頭へ移動して行った。

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