ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その１６

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

一

ⅹⅵ

「ううん。お兄ちゃんはぼくのお兄ちゃんじゃないよ」

　太一の言葉に麻里は首を傾ける。

「あら？　じゃあ、ご親戚？　それとも先輩？」

　小学生に先輩がいるのだろうか。

などと考えながらも疑問を口にすると、

太一が大きく頭を縦に振った。

「あ、そうだ。昨日、黄梅駅の近くにいたでしょう。

可愛いお姉さんだったから覚えてるんだ」

　黄梅駅の近く、と聞いて麻里は目を瞬く。

そういえば、昨日子供づれの青年と

すれ違ったような気もしないでもない。

正直よく覚えていないが、あの子がそうだったのだろうか。

（一瞬誘拐かな、って思っちゃった気もしないでもないけど……）

　勘違いしてしまったことを密かに恥じながら、

麻里は太一へ微笑みかける。

「あ、ありがとう……」

　なるべく自然にと柔らかな表情を意識していると、

太一が嬉しげに笑んできた。

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