ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その３２

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

二

ⅲ

「おかまいなく、ね？　ありがとう、太一君」

口元を綻ばせると太一が指を差してくる。

「あー！　それそれ！　ありがとう、お姉さん。おかまいなく」

「どういたしまして」

　得意げに胸を張る太一に麻里はお辞儀で応えて見せた。

満足げに鼻を膨らませた太一が、菓子皿へ手を伸ばす。

「あ！」

　だが、すんでで手を止め、見つめてきた。

「お姉さん。どこで手を洗えばいい？」

　太一の問いに麻里は恥じ入る。

そう言えば、手を洗わせることを忘れていた。

一教師であるならば、

衛生面や健康面においても気をつけなければ。

麻里は気を引き締め、席を立つ。

「こっちのドアよ」

　洗面所へ案内しながら、

麻里は小学生を家へ呼んでしまったことへの責任を感じていた。

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