ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その３４

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

二

ⅴ

「へえ、サッカーじゃないんだ。

てっきり最近はサッカーのほうがメジャーだと思ってたわ」

「お姉さん、今の時代は野球だよ。野球。

ジャイアントウルフルズの鈴木剛志（すずきつよし）

みたいなかっこいい選手になるんだー」

　力説しながら、水を止める。

太一はハンカチを取り出し忘れたことに気がつく。

仕方ないからズボンで手を拭こうか思案していると、

おもむろに麻里がふわふわのタオルを差し出してきた。

女子が好きそうな可愛いうさぎのアップリケがついている。

「鈴木剛志は私も知ってるわ。

そっか。また野球が主流になりつつあるのね」

「あ、ありがとう。お姉さんも鈴木剛志知ってるんだ。

かっこいいよねー」

　麻里が『鈴木剛志』を知っていたことに太一は喜んだ。

タオルを受け取りながら、顔が緩むのがわかる。

（鈴木を知ってるなら、ぼくの髪型のこともわかるかな？）

　半分期待を込めて、太一は頭を見せつけるように軽く揺らした。

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