ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その４７

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

二

ⅹⅷ

「やっぱり昔話とは違うのかなあ？」

　眉を八の字に下げると、今度は彼女のほうが訊いてきた。

「太一君は何か聞こえない？」

「ううん。なんにも聞こえない。あっ！　湯気が」

　今まで波のようにたゆたっていた湯気が、

首を横に振ると同時に薄れだす。

太一が驚き、声を発せば湯気が吹き飛び。

さっきまで見えなかった麻里の顔が

ぼんやりと湯気の合間から見え隠れする。

「え？　どうしたの？」

　もくもくしていた湯気が、

すぅーっと鍋に吸い込まれていくように消えていく。

瞳を見開く麻里の姿を

はっきりと肉眼でとらえることができてしまった。

「お姉さん。どうしよう湯気がなくなっちゃったよっ！」

「どうしたのかしら？　まだそんなに煮込んでないのに……」

　さすがは教師というべきだろうか。

慌てふためくこちらとは逆に、

麻里は冷静にＩＨコンロと鍋を調べ始めた。

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