ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その５７

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

三

ⅴ

「あん、満？　お嬢さん、満を知ってるんだべか？」

「あ、はい。昨日助けていただいて……」

　助けてもらったときのことを思い出したのか、

麻里は頬を赤らめ邦夫へ顔を向ける。

だが、無言のまま口の開閉を繰り返す邦夫の様子に

冷静さを取り戻したらしい。

もじもじと照れくさそうに話していた麻里が

きょとんとした顔で邦夫を見つめた。

「あれ？　その件とは別でしたか？」

（満さんって誰なんだろう？　やっぱり獣人さんなのかな？）

　知らない名前に内心で首を捻りながら太一は、

大人たちの会話を黙ったまま聞く。

すると今まで静かにしていた小さいムササビが突如暴れ出した。

「キキキー！」

　太一は耳元で発せられたムササビの甲高い鳴き声に

びくっと肩を揺らす。

早鐘のように脈打つ胸に手をあてていると、

興奮したように茶色い毛の塊が肩と頭を行ったり来たりし始めた。

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