ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その１０９

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

六

ⅸ

「え？　連絡先ですか？　なんでです？」

　野木崎が本当に何もわかっていない様子で目をしばたたかせる。

なかなか面倒な性格をしているものだ。

半ば呆れながら、善郎はメモ帳を弾く。

「いざって時に連絡できないのは困るだろうが」

　眉間に皺を寄せ野木崎に目を向けると、野木崎が小さく手を打つ。

「あ、白菜のキムチ漬けのことがありますものね。わかりました」

「キムチはどうでもいいだろう」

　とことん論点がずれている。

この女性がそうなのか、それともこれが最近の若者というものなのか。

判断がつきかねかぶりを振ると、野木崎が卓袱台をぽん、と叩く。

「何言ってるんですか。

キムチ以外に連絡が必要になることなんてないじゃないですか」

「あるだろうが！　たくさん！」

　ついつい突っ込みを入れるこちらを尻目に、

野木崎が連絡先を書きだした。

（なんだ、結局書くんじゃないか）

　やはりどうにも彼女の思考が読めない。

善郎は薄くなった頭をぽりりと掻き、

ズボンのポケットから携帯を取りだす。

「……まあ、それはそれとして、ほれ、これが俺の番号だ」

　番号を表示させ携帯を渡すと、

連絡先を書き終えたらしい野木崎が受け取った。

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