ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その１５

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

二

ⅳ

「あー！！！」

「いたたたー」

　悲鳴じみた男の声とともに、自転車から転がり落ちる。

律子は、道に強打した臀部をさすりながらよろよろと立ち上がった。

「だだだだだ、大丈夫ですか！！」

「大丈夫だべか？」

「大変！　怪我はない？」

　わらわらと三人の老人たちと若い男性が寄ってくる。

律子は若干怯みながらも、愛想笑いを浮かべた。

きっと顔は引きつっているに違いない。

痛みに耐えているのだと思ってくれればいいのだが。

そんなとりとめのないことを考えながら、ハッと我に返る。

ここは獣人たちの棲む地区だ。

その場所にいるということは、彼らは獣人なのだろう。

人間である自分がいてはどんなことを言われるか、

考えるだけで背筋に冷たいものが走る。

律子は早々にこの場から立ち去るべく倒れた自転車に手を伸ばした。

「なんとか大丈夫で……って、あー！　籠がぺしゃんこに……」

　起こした自転車の台形だった網カゴが見事に潰れ、

菱形になっている。

これでは買い物をしても袋が入れられないではないか。

律子が力任せにカゴを直していると、

紺色のスーツを着た茶色い髪の青年が土下座でもするかのような勢いで

頭を下げてきた。

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