ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その３６

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

三

ⅰ

　あれよあれよと言う間に連れてこられた先は、

古民家のような家の前だった。

同じ敷地に二棟あるということは二世帯なのだろうか。

（獣人なのにこんな場所に知り合いがいるのかしら？）

　昔堅気の人間が多く住んでいる中央区に、

飛田のような獣人と知り合いだという人間がいるとは思えない。

だが、飛田は慣れた手つきで、

山波と書かれている表札のすぐ下にあるチャイムを押した。

「はーい。どちら様ですか？」

　インターフォン越しにおっとりとしたような声音が聞こえてくる。

飛田が襟足へ手を当てながら応えた。

「あ、すみません。飛田です」

「あ、はいはい。今開けますよ」

　律子は、飛田へ対し好意的な態度を示した家人に、目を見張る。

（中央区に住んでる人ってみんながみんな

獣人のことを嫌っているわけじゃないのね）

　もしかしたら自分と同じ考えの持ち主かもしれない。

わけもわからないままついてきてしまい不安だったが、

少しだけ希望が見えてきた。

律子は、未だ玄関へペコペコと頭を下げ続けている飛田へ

視線を向ける。

「あの、飛田さん？　ここはどこなんですか？」

「山波さんのお宅です」

　飛田との関係を知りたかったのだが、訊き方がまずかったようだ。

青年の口から出た答えに二の句が告げずにいると、

玄関のドアが開いた。

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