ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その３８

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

三

ⅳ

「飛田さん？　どうしたんです？」

「いえ、なんでもありません。山波さん」

「あらまあ、飛田さんったらそんな他人行儀な。

いつも通りでいいですよ」

「あ、はあ……。じゃ、じゃあ、お義母さん」

　飛田が嬉しそうに頬を染める。

それを見て、女性は満足気に笑みを深くした。

「ねえ、みのり様も黄金梅を実らせようとしてるって本当なの？」

　和やかな会話を続けている二人を引き離すように

彼らの間に割って入る。

「あ、はい。そうみたいです。

とにかく、くわしい話はお義父さんに会ってもらってからで」

「お父さんってあなたのお父さんなの？」

　律子は、今さらながらの疑問を口にする。

女性のことも母と呼び直していたが、

飛田は人間と獣人のハーフなのだろうか。

首をかしげて青年を見ていると、

飛田の顔が一気に朱に染まった。

「ちちちち、違います。

ええっと、でも僕はお義父さんになってもらいたいなって

思ってて……」

（それってこの家の子と付き合っているってこと？）

　だから獣人に対して友好的だったのか。

腑に落ちた。

娘を獣人へ嫁がせようと考えている人間ならば、

差別のない世界を望んでいる自分の気持ちも

わかってくれるに違いない。

律子は、自分の想像が今回ばかりは妄想にならないことを確信し、

満面の笑みを浮かべた。

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