ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その４２

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

三

ⅶ

「なんだなんだ！　なんの騒ぎだ！」

　障子が勢いよく開き、眉間に皺を寄せた善郎が入ってきた。

間髪入れずにぎろりと睨まれ飛田は身を竦ませる。

硬直しているその横で、律子が耳打ちしてきた。

「あなたその角、お義父さんの前では絶対出しちゃダメよ」

　だが、どうやらその声は善郎の耳にも届いていたらしい。

「お義父さんって誰のことだ？」

　渋面で問い返してくる善郎を前に飛田は腹をくくった。

「お、お義父さん！」

　思い切って声をかけるその背後から、和子の声がする。

「あらあら、大変」

　まったく緊張感のない口調の和子を意に返さず、

律子が平静な声音で応対した。

「あ、初めまして。突然お邪魔してしまって申し訳ありません。

ご主人様でいらっしゃいますか？」

「誰だあんた？」

　丁寧なお辞儀を施す律子の前に胡座をかいた善郎が、

不機嫌そうに誰何（すいか）する。

「野木崎律子と申します。先ほどそちらの飛田さんとお会いしまして。

あの黄金梅を実らせようとしているとか」

　律子の言葉に善郎が目を剥いた。

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