ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その７

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

一

ⅶ

「と、とんでもないです。

場所だけでも良かったのについてきて貰っちゃって

逆にすみませんでした。

でも私１人だったら迷子になっていた気がするので

とても助かりました」

　律子がにこりと笑うと、

大輔も肩の力が抜けたのかぎこちなく笑みを返してくれた。

「帰りはこちらの道から帰るといい」

「はい。ありがとうございます」

　律子は、来た道とは別の道を指差す大輔へ頭を下げる。

元々の性格なのか、それとも銀行員という職のせいか、

少し突き放したような口調の大輔に初めて会ったときは

戸惑ったものだ。

しかし今では、言い方が冷たいだけで

根はとても優しい人だということを知っている。

むしろ人が良すぎて騙されてしまうのではないかと

心配してしまうくらいだ。

「ああ。それじゃ」

「あ、あの、お義姉さんにもよろしくお伝えください」

　きっちりと七三に固めた金茶色の髪の毛の上へ

ヘルメットを被せた義兄に伝言を頼む。

「ああ、わかった」

「お義兄さん、ありがとうございました。いってらっしゃい」

　律子が再度礼を言うと、大輔は無言のまま手を挙げた。

そしてスクーターに乗り来た道を引き返す。

律子は、自転車と同じくらいの速度で去っていく大輔の姿が

見えなくなるまで彼を見送った。

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