Gold Plum
第二章
交錯
~善郎&律子の場合~
四
ⅹⅶ
『あ!』
「あー! 私の石が!」
「あらまあ」
一瞬の出来事だった。
火の中に入った石がパチパチと音を鳴らしている。
何が起きたのか思考がまとまらない。
硬直したまま茫然としていると、
鳥の羽ばたく音が聞こえてきた。
音のほうへと目線を向けるとそこには、
黒光りのカラスがバサバサと音を立てながら
満の肩へ着地しようとしている。
「長! 大変です」
「鴉生! 大変なのはこっちもだ」
慌てた様子の鴉へ満ががなる。
だがそんな満の態度に鴉は冷静さを取り戻したようだ。
器用に羽を折り畳むと満の耳元へにじり寄った。
「いえ、そうではなくて……」
「何! 麻里が!」
鴉生の耳打ちに満の目の色が変わる。
小さく漏れ聞こえてきた名前に律子は首を傾げた。
(麻里さん? 麻里さんってあの麻里さんよね?
何かあったのかしら?)
満へ問いかけようと律子は足を動かす。
だが山波の叫び声に驚き、
律子は足を持ちあげたまま目を見張った。
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