Gold Plum





第二章


交錯


~善郎&律子の場合~




ⅹⅶ




『あ!』

「あー! 私の石が!」

「あらまあ」


 一瞬の出来事だった。

火の中に入った石がパチパチと音を鳴らしている。

何が起きたのか思考がまとまらない。

硬直したまま茫然としていると、

鳥の羽ばたく音が聞こえてきた。

音のほうへと目線を向けるとそこには、

黒光りのカラスがバサバサと音を立てながら

満の肩へ着地しようとしている。

「長! 大変です」

「鴉生! 大変なのはこっちもだ」


 慌てた様子の鴉へ満ががなる。


だがそんな満の態度に鴉は冷静さを取り戻したようだ。

器用に羽を折り畳むと満の耳元へにじり寄った。

「いえ、そうではなくて……」

「何! 麻里が!」

 鴉生の耳打ちに満の目の色が変わる。

小さく漏れ聞こえてきた名前に律子は首を傾げた。


(麻里さん? 麻里さんってあの麻里さんよね?

何かあったのかしら?)


 満へ問いかけようと律子は足を動かす。

だが山波の叫び声に驚き、

律子は足を持ちあげたまま目を見張った。










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