ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その７９

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

五

ⅴ

（……そんな不真面目な感じには見えなかったけどなー）

　どちらかと言えば不真面目とは正反対の真面目な人物に見えた。

そのうえ他者からの頼まれごとを断れないような。

良く言えば優しい獣人、

悪く言えば気弱な獣人といったところだろうか。

だが律子は、これ以上山波を怒らせないよう、無言を貫いた。

　ただでさえ先ほど満が乱入してきたときに

血管が切れるのではないだろうかと不安に思うほど

激情していたのだ。

獣人な上に娘の婿候補の飛田の話題を口にすれば、

再び激昂することは容易に想像できる。

（飛田さんの好感度アップはあとですることにして、

今は石よ、石）

　律子が内心で決意していると、

和子がそうだわ、と言いながら手を叩いた。

「たわしでも持ってきましょうか？」

「あ、そうですね。お願いします、奥さん」

「はいはい」

　パタパタとサンダルの音を立て去っていく和子を

耳の端で捉えながら律子は山波のほうへ体を向けた。

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