ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その８０

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

五

ⅵ

「お義父さん、

この焦げた石に何が書いてあったか覚えてたりします？」

　拾いあげた数個の焦げた石を山波へ見せる。

しかし山波はけんもほろろに否定してきた。

「覚えとるわけないだろう」

「そうですよねー」

　なんとなく予想はついていた。

それでも一度見たものは暗記できると言っていた麻里のような

特技があるかもしれないと思ったのだ。

（やっぱり麻里さんのあの特技は

誰にでもできるわけじゃないんだわ）

　なんの縁なのか、

出会ったばかりだというのに妙に印象づいている。

律子は、教師には見えない自分よりもかなり年下であろう

麻里のことを思い出し、頬を緩めた。

「はいはい、たわしですよー」

　去っていったとき同様、音を立てながら和子が戻ってくる。

その手には見慣れた亀の子たわしと、

靴を洗うときに使うたわしが握られていた。

「あ、ありがとうございます」

　和子から渡された亀の子たわしで石を擦る。

「落ちないわねー」

　どのくらい経っただろうか。

薄まることもなく黒いままの石をたわしで擦り続けていると、

飛田が悄然として戻ってきた。

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