ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その８２

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

五

ⅷ

「え、ちょ、ちょっと飛田さん！

そんな勝手なことを……って行っちゃった」

　野木崎が呼びかけるも走り去ってしまう車を見ながら、

和子が頬へ手をあてた。　

「あらあら。せっかちな人だわねえ」

「飛田さんって、鹿っていうより猪なんじゃないかしら」

　溜め息をつく野木崎の言葉を聞き、善郎は内心で深く頷いた。

和子はあらあら、と言いながら石の焦げを落とし続けている。

「って、あー、すみません奥さん。

石を洗っていただいて。代わります」

　野木崎が気づいて和子へ話しかけた。

石を洗いだす野木崎を前に、和子が小首をかしげてくる。

「あら、そう？　じゃあお茶のお代わりでもいかがです？」

「ありがとうございます。いただきます」

　誘いに乗ってくる野木崎の言葉に、和子が室内へ戻っていった。

一つ前を読む　　　 GPの部屋に戻る　　　次を読む