ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その８８

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

五

ⅹⅳ

（和子の奴、余計なことを！）

　自分は今全世界の命運と向き合っていたのだ。

いや、そこまで大げさなことではないが、

気概だけはそのつもりだったのだ。

なのに、和子は手際よく濡れた卓袱台を拭いていってしまう。

（これは俺の戦いなんだ！）

　拳を握り締めていると、野木崎が、あ、と声をあげた。

「そういえばお義父さん。さっきの石。

たわしでこすってたら、変なのが浮かびあがったんですけど、

これも古字ですか？」

　白々しく尋ねてくる野木崎に腸が煮えくり返る。

「俺はあんたの父親じゃねえ！」

　腹立ちまぎれに卓袱台を叩くと、野木崎が不愉快げに顔をしかめた。

「平和って。たしかに人間である私は平穏無事に生活させてもらってますけど、

この市に住んでるいるのは飛田さんのような獣人や、

獣人と人間両方の血を継いだハーフだっているんですよ。

彼らにだって平和に暮らす権利はあるはずなのに。

そうじゃないじゃないですか」

　野木崎が立て板に水の如く捲し立ててくる。

善郎は拳を卓袱台へ叩きつけながら吼えた。

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