ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その９３

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

五

ⅹⅸ

「ふん！」

（あんな気難しそうな相手を簡単に操縦してる奥さんって

やっぱりすごいわ）

　律子は和子へ尊敬の眼差しを送りながら、

先ほど和子に言われた言葉を脳裏に浮かべる。

（人それぞれの正義と平和……）

　それはつまり自分にとって正義だと思っていても、

他者にとっては平和を脅かす悪になるということだろうか。

（それでも獣人の差別で、

誰かの犠牲の上で成り立つ平和なんておかしいわよ）

　律子が物思いに耽っていると、

ふいに呪文のような言葉が聞こえてきた。

「『○んふう○ゆ○へ　あ○きほ○お○み○　○から○し○』だ」

「へ？　なんですか？」

　パチリとまばたきをし、山波へ視線を合わせる。

どこか呆れた様子の山波と目が合った。

「だから、さっきの古語だ。あとは調べてみんとわからん。

……ちょっとどいてみろ！」

「あ、はい」

　山波の進路を邪魔しないように脇へ寄る。

山波はドタバタと音を鳴らしながら居間へと入って行った。

そして、古文書と木板を持って庭へ戻ってくると、

おもむろに石を並べ始めた。

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