ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その９５

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

五

ⅹⅹⅰ

「今風に読むと『薫風の夕べ　熱き炎産みし　宝の書』だな」

　これを今風と言っていいのかはわからないが、

口語訳だとこんなものだろう。

意味はわからないが、

とりあえずこれで野木崎も満足するのではないだろうか。

期待を込めて野木崎を見ると、

彼女は人差し指を顎にあて考え込んでいた。

「薫風ってことは今頃のことですよね？

今頃の夕方に炎が生まれるんですか？」

　野木崎の問いに善郎は首肯する。

「うむ。それもあると思うが、

『五月の風吹く夕方に』ってことだから、

風が関係してるのかもしれん。

風の吹く夕方にこの石をもう一度炎にくべてみろってことじゃないか？」

　あてずっぽうで読み解いて見せると野木崎の完成が聞こえてきた。　

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