Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




IIA




「いえ、大丈夫ですよ。って行ってしまわれましたね」


 碧が人のよさそうの笑みを浮かべる。

しかし向けられた従業員は、脱兎のごとく走り去ったあとだった。

あっという間に宿の中へ消えた従業員へ、碧は肩を竦め苦笑する。

だが、みのりはそんな側近の相手はせずに、

一人残った従業員へ近づき話しかけた。


「あのすみません救急箱を貸してもらってもいいですか?」

「あ、はい! 只今ご用意させていただきます!」


 逃げ出すように中へ入って行った従業員へ続く形で、

もう一人の従業員も一礼するとそのまま駆けて行ってしまう。


(そんなに怖い顔していたかしら?)


 みのりは、怯えたような顔をして去って行った

従業員の背中を見ながら首をかしげる。

もしかしたら引き攣った笑みを向けていたのかもしれない。

これからしようとしていることが、

思った以上表情筋を固めてしまっていたようだ。

みのりがほぐすように頬へ手を当てていると、

のほほんとした涼介の声が辺りに響いた。










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