Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
四
IIA
「いえ、大丈夫ですよ。って行ってしまわれましたね」
碧が人のよさそうの笑みを浮かべる。
しかし向けられた従業員は、脱兎のごとく走り去ったあとだった。
あっという間に宿の中へ消えた従業員へ、碧は肩を竦め苦笑する。
だが、みのりはそんな側近の相手はせずに、
一人残った従業員へ近づき話しかけた。
「あのすみません救急箱を貸してもらってもいいですか?」
「あ、はい! 只今ご用意させていただきます!」
逃げ出すように中へ入って行った従業員へ続く形で、
もう一人の従業員も一礼するとそのまま駆けて行ってしまう。
(そんなに怖い顔していたかしら?)
みのりは、怯えたような顔をして去って行った
従業員の背中を見ながら首をかしげる。
もしかしたら引き攣った笑みを向けていたのかもしれない。
これからしようとしていることが、
思った以上表情筋を固めてしまっていたようだ。
みのりがほぐすように頬へ手を当てていると、
のほほんとした涼介の声が辺りに響いた。
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