Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




IID




「あ、すみません。

今日、具合が悪くなったので休ませて欲しいと言って

宿を取った客がいると思うのですが?」

「あ、はい。お昼ごろにいらっしゃいました。

お部屋は確か一番奥のすずらんの間だったと思いますが。

お知り合いですか?」


 従業員はあっさりと律子という女性の居場所を教えてくれた。

本当の身内かどうかもわからないのに少し迂闊ではないだろうか。

だが、そのおかげで彼女のいる場所を知ることができたのだから

今回は助かったと言うべきか。

したり顔で笑う碧を横目に、みのりは涼介のそばへ近づいた。


「ええ、身内です。家族の者がすみませんでした。

迎えに来たので部屋へ案内してもらえませんか?」


 そうですか、と嬉しげに答える従業員と碧の話が気になるのか、

涼介はこちらのことを気づきもしない。

近づいてくる人間の気配くらい察するだろうと少し待ってみる。

が、一向にこちらを見ようとしない涼介にみのりは痺れを切らした。


「ちょっと!」

「ん? なんだい?」


 今気づいたといわんばかり瞳を丸くする青年に

こめかみをひきつらせる。

しかし、今回はケンカをしに来たわけではないのだ。

腕の中にある硬い感触が冷静さを取り戻させた。


「かがみなさいよ」


 少しぶっきらぼうな言い方をしてしまったが、

涼介は気にならなかったらしい。

きょとんとした顔でこちらを見てくる。


「? なんで?」

「な、なんでって……にぶい男ね!」


 救急箱を持っているのだから

何をされるかわかるだろうと思っていた。

それなのにこの男はまったくわかっていないようだ。

鈍感にもほどがある。


「いいからしゃがみなさい!」


 みのりは恥ずかしさに声を荒げ、 涼介の肩を力強く抑えこんだ。










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