Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




G




「いてぇー!!」


 狸の腕を思いきり噛みつく。

男の絶叫が辺りに木霊した。

狸は鬘から手を離し、ぶんぶんと腕を振り払う。

しかし、みのりは離してなるものかと噛みついたまま

両手で狸の腕にしがみついた。


「お嬢さま、かっこいい」

「お嬢様、そのまましっかり噛んでいてくださいね」


 紅の称賛と碧の進言に目線のみで頷いてみせが、

それも長くは持たなかった。

痛みから逃れようとする狸の必死さと、

噛みなれていないため顎が痛くなってしまったのだ。

気がつけば投げ飛ばされるように狸の腕から離れて行った。


「きゃあ!」


 急に襲ってきた浮遊感にみのりは悲鳴を上げる。


「みのりさん!」


 涼介の声が聞こえてきた。

だが、落下したあとの衝撃に耐えるため目をつぶっていた

みのりには彼がどこにいるのかわからなかった。


「うっ」


 どさっという鈍い音と共に衝撃が全身を駆け巡る。

胸がつまりうめき声をあげたが、

思っていたよりも痛みはなかった。


(廊下の絨毯がふかふかだからかしら?)


 内心で首を傾げながらみのりは、

そろそろと閉じていた瞼を開けた。










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