Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




I




 廊下にしたたか打つと思っていた痛みは、

涼介が抱きかかえられることによって軽減されていたらしい。

今、抱きしめられる形で涼介の腕の中にいる。

脳が現状を理解した瞬間、血の気が引いた顔に熱が戻った。


(やだ! 私また涼介に助けてもらっちゃたの?)


 ドキドキと胸を高鳴らせながら意外と居心地のよい

涼介の体躯に包まれていると、

涼介が不思議そう顔でこちらを窺い見てくる。


「みのりさん?」


 涼介から優しい声音に、みのりは我に返った。


「え? だ、大丈夫よ! って、早く離しなさいよ!」


 なぜ居心地がいいなんて思ってしまったのだろう。

みのりは突如として襲い掛かってきた羞恥心に、

涼介の腕の中であばれた。

こちらが指摘しなければ、

ずっと抱きしめられたままだったのかもしれない。


「あ、わ、悪い!」


 涼介は慌てた様子で体を離し、明後日のほうを向く。


「べ、別に! その、一応、礼だけは言っておくわ!

……ありがとう」


 恥ずかしさにみのりも、涼介とは反対のほうへ視線をやった。


「あ、ああ。とにかく無事でよかったよ」


 こちらの礼にぎこちなく頷く青年の顔が気になり、

ちらりと目線を戻す。

襟足をなでつけながら未だにこちらを向こうとしはない涼介の頬が

微かに赤らんでいるように見えた。










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