Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




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「お嬢様ー、

ツンデレもいいですけど状況を考えてしてくださいねー」


 なんとも言えない空気が漂うところに碧の呑気な声が

割り込んでくる。

しかし、その手元には自分を振り落した狸が押さえつけられていた。


「いてててっ! ちくしょー!」


 まだ諦めていないのだろう。

狸がじたばた動いている。

みのりは狸の動きを封じるように背中に乗りながらこちらを見てくる

碧を睨みつけた。


「つ、ツンデレじゃないし。お礼を言うのは当然じゃない!」

「まあ、そういうことにしておきましょう」


 にやにやと人の悪い笑みを浮かべてくる碧に、

みのりは眉を顰める。


「お前も覚悟しろ!」


 紅が残っていた狸に襲いかかった。


「うわあ! 何しやがる!」


 華奢な体のどこにそれだけの力があるのか、

紅の一撃を受けた狸は廊下に突っ伏す形で倒れ込んだ。

それぞれの敵が捕まり安堵していると、

涼介が思い出したように声を張る。


「そうだ! みのりさん! 早く野木崎さんを!」

「そうね。この部屋に彼女がいるのよね……」


 安心するのは早すぎる。

まだすべてが終わったわけではないのだ。

みのりは、閉まったままドアを見つめ、ごくりと唾を飲み込む。

ドアノブへ手を伸ばそうとした瞬間、

『どん!』という音が聞こえ、手を引っ込める。


「ぬおおおおおおおお!」


 開閉されるはずのドアが破られ、

部屋の中から大柄の男が雄叫びを上げながら出てくる。

猪の獣人なのだろうか。

こげ茶色の毛で覆われた大きな鼻を鳴らしながら、

大男はこちらを一瞥することなくそのまま廊下を走り去って行った。










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