Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
五
IF
「おっと……」
「ごほごほごほ」
碧の声とせき込む紅の声を頼りに視線を向ける。
案の定、狸たちは白煙に紛れて側近たちからの拘束から外れていた。
「あ! ちょっと逃げるな! 待ちなさい!」
みのりは狸たちを捕まえようと手を伸ばす。
だが、すでに走り始めて彼らへ手が届くはずもなかった。
「へ? ええっと、うわ、何かしら? 煙? ごほごほごほ!」
「うわぁー! 真っ白で何も見えゴホゴホゴホ」
すっかり真っ白い煙に覆い尽くされる中、
麻里の声と太一の声が響き渡る。
口に手を当てることなく声をあげてしまったのだろう。
苦しそうにせき込む音だけが聞こえてくる。
彼らが狸を追いかけることはできないだろう。
他に誰かいないか耳を澄ますが、
聞こえてきたのは咽っている山波の声だけだった。
「ごほごほごほ!」
(みんなに頼むのは無理そうね……)
こうなったら自分が行くしかない。
幸運にも今のところ呼吸は普通にできる。
みのりはよし、と内心で呟き、こくりと頷いた。
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