Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
五
IIB
すると、ずっと野木崎の調子を見守っていた太一も膝を折り、
野木崎へ話しかける。
「おばちゃん、カケルが心配してたよ?」
難しい顔をして首を傾げる太一を前に、野木崎が頬に手をあてた。
「そうよねー、今日はカケルが帰ってる前に家にいるはずだったんですもの」
のほほんと告げる野木崎に半ば感心しつつ、涼介は手の縛めを解ききる。
すぐに彼女の足元へ回り込み縛めに手をかけ始めていると、
律子が山波へ声をかけた。
「山波さん、そんな泣かないでください。あのご心配おかけしてしまって……」
気遣わしげな様子で山波を宥めに入る野木崎の言葉を聞いていると、
小越が声を震わせた。
「そうですよ。山波さん! わ、わたしだって泣きたく……うっうっ……」
よほど我慢できなかったらしく、小越も本格的に泣き始める。
どうやらこの小越という女性は本当に感受性の強い人らしい。
(そんなことやってる場合じゃないと思うんだけどなあ……)
実際みのりや紅は泣いていない。
それよりもやるべきことがあるのを知っているからだ。
(さすが次期当主様だ)
などと思うのはさすがに贔屓目なのかもしれないが。
涼介はちらりとみのりへ目をやり、こっそりと彼女の表情を窺う。
唇を引き結び静かな怒りを醸し出してはいるものの、瞳の色は静かだ。
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