Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
五
IID
「え、ええ。ありがとう。
あのー助けてもらって言いにくいのですがどちら様ですか?」
律子は涼介の手を借りて立ち上がると、訝しそうな顔で碧を見る。
(へえ、珍しいわね。
碧のあの笑顔を見て瞳をハートにしないなんて)
みのりは彼女の態度に感心した。
しかし、それも当然のことなのかもしれない。
見たところ普通の主婦のように思える女性が、
突然何者かに攫われてまったのだ。
いくら見知った顔があったとしても知らない人間が一人でもいたら
警戒心も強くなるだろう。
律子は涼介へ説明を求めようとしているのか、
碧と青年の顔へ交互に視線をやっている。
みのりは彼女に気取られないよう、律子を観察した。
「申し遅れました。わたくし、こういった者です」
碧が何事も感じていないかのように
スーツの胸ポケットから名刺を取り出し、律子へ差し出す。
それを彼女は、ご丁寧にどうも、と頭をさげながら受け取る。
そして律子は碧から受け取った名刺を食い入るように見つめると、
微動だにしなくなった。
「どうかしましたか? 野木崎さん?」
動かなくなった律子に涼介が首を傾げながら話しかける。
しかし青年の声は律子へ届いていないようだった。
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