Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
六
I
「美味しい! この出汁巻き卵普通のとは少し違うわね」
律子が黄色い出汁巻き卵を一口くちに含み目を見開くと、
横にいた小越も微笑む。
「ご飯がおかゆになっているのもありがたいですね」
涼介は小越の言葉に内心で頷きながら、蕨(わらび)のお浸しを口へ運ぶ。
柔らかな出汁の風味と甘味、それから微かな苦みが口中へ広がった。
(美味い……)
昨日は夕飯も碌に食べないでいただけに、こうして食べる朝食に幸福を感じる。
(無事に帰ってこられてよかったよなあ……)
よく考えたらかなり危ない橋を渡ったのかもしれない。
しみじみ朝食の美味しさに浸っていると、
紅の御膳の端へ座っていた雪姫が声をあげた。
「わらわは、このちべたいアイスなる代物が美味マロー」
雪姫の言葉で涼介は我に返る。
(アイス……、氷か……)
そういえば、雪姫は氷を所望する、と言っていた。
氷と言えばコンビニの氷かと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
そうでないとしたらなんだろう。
昨夜眠る直前、ふとそんなことを考えた。
種を植えた時にでてきたあの鉄の取っ手、
それと同時期に生まれでた雪姫の存在。
それらを考えると、一つの仮説に行き当たる。
(まあ、確証はないんだけどさ……)
涼介は持っていた箸を置いて口を開いた。
「そういえば、雪姫様の氷のことなんですが……」
おずおずと言葉を紡ぐと、雪姫の瞳が輝く。
「氷見つかったマロ!」
期待を込めて尋ねられ、涼介は少しだけ居心地の悪い気分になった。
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